リウマチの診断、早期診断

この項では、リウマチの診断、特に早期診断に的をしぼって、お話しをしたいと存じます。皆さんが、関節の痛みや腫れ、体のだるさ、微熱などで近所のお医者さんにかかると、まず、痛み止め(非ステロイド系抗炎症剤)にて様子をみましょう、と言われると思います。これは、決して誤った治療法ではなく、多くの関節の痛みはこれで良くなってしまうことが多いからなのです。例えば、風邪を引いた後などに筋肉や関節が痛くなり、寝不足や過労で痛みが出ることはよくあります。但し、こういった痛みは、時間が解決してくれ、何週間も続くことはありません。しかし、長くつづく関節の痛みやこわばりなどがある時は、リウマチなども考えて血液検査、レントゲン検査などをしましょうということになります。これで、次にお話しするリウマトイド因子が陽性だと、関節リウマチだという診断を下されることが多いのです。でもちょっと待ってください。関節リウマチは、関節が痛くてリウマトイド因子が陽性ならば診断できる訳ではありません。リウマトイド因子陽性で関節が痛くなる病気は、他にも膠原病や甲状腺、肝臓、腸、皮膚の病気など色々とあります。これらの病気の原因は、確かに似ているのですが、治療法が異なり、やはり一度はリウマチを専門にしている先生に本当にリウマチかどうか判断してもらう必要があります。

ところで、皆さんは、リウマチを専門にしている医者のところへ来れば、たちどころに診断がつくと考えられているかもしれませんが、それは病気がある程度進んだ状態ならばすぐにわかりますが、早い時期(痛みが出て6週間以内)では確信をもって診断できないのです。それは、リウマチの症状が一人一人異なり、関節の腫れる病気は100以上あり、病気の起こり始めは、みんな症状が似ているからです。それで、このリウマチをしっかり診断しようということで、診断基準というものができました。私達は、この診断基準を用いて患者さんがリウマチかどうか判定している訳です。しかし、診断に迷う患者さんも中にはいらっしゃるので、いろいろと精密検査が必要になることもあります。

関節リウマチの診断基準(アメリカリウマチ学会 1987年)

  1. 朝のこわばり
  2. 3領域以上の関節炎
  3. 手の関節炎
  4. 対称性関節炎
  5. 皮下結節
  6. リウマトイド因子陽性
  7. X線上の変化

以上の7項目中4項目を満たす。

この診断基準は、大変よくできていて診断がどのような場所(開業医であろうが病院であろうが僻地であろうが)でも簡単に下せるようになっています。但し、リウマチを勉強して知っている医者がいるという条件付きですが。ただ、問題点があるのは、6週間以上関節炎(関節の痛みと腫れ)が続かないと診断できないということにあります。関節が腫れ、痛いので早めに受診したのに、少し痛み止めで様子をみましょうということになる訳です。それから少し通院したら、あなたの主治医がやっぱりリウマチだと診断し、もう少しリウマチのちゃんとした治療をしましょうという事になる訳です。医者も患者もリウマチを早い時期に診断して、よりよい治療をして寛解(薬なしで痛みのない状態)に持ち込むのが目標なのに、これでは時間がかかり過ぎるということで早期の関節リウマチの診断基準が提案されています。但し、以下の早期関節リウマチの診断基準案は、血液検査とMRIでの検査結果が重要な意味をもち、リウマチの専門施設のみで診断が可能です。従って、リウマチ専門医が慎重に用いるべき基準と思います。

早期関節リウマチ診断基準案
(厚生労働省研究班 江口ら、2005年)

  1. 抗CCP抗体またはRF
  2. 対称性手・指滑膜炎(MRI)
  3. 骨びらん(MRI)

1)、(2)、(3)の3項目中2項目以上を RA と診断すると、感度86.8%、特異度87.5

» 前の章「リウマチの症状」へ » 次の章「リウマチの経過、予後」へ