部門紹介

臨床工学技士は、医療機器のスペシャリストとして医師の指示のもとに生命維持管理装置(人工呼吸器、血液浄化装置、除細動器など)の操作や保守点検を行なう職種です。
当院の臨床工学科は、平成10年に診療技術部の単独の科として設け4名でスタートしましたが、近年、内視鏡室やOPE室への業務拡大を行い、現在は9名に増員し内視鏡業務、手術室業務も行っております。

スタッフ紹介
  • 臨床工学科長兼診療技術部長 尾崎 征史
  • 臨床工学技士 その他8名
業務内容

[血液浄化業務]

臨床工学技士は安全に治療が提供できるように、透析装置と周辺機器の保守、点検や修理を行なっています。
重症の患者様が移動困難な場合は、病棟に出向いて透析を行うこともあります。また、急性血液浄化・特殊血液浄化などにも携っており休日や時間外にも対応しています。

急性血液浄化・特殊血液浄化には以下の方法があります。

 

・CART(腹水濾過濃縮再静注法)
CARTは利尿剤投与を行っても治療困難な患者様に腹水を取り出して貯留バックに貯めます。まず血球成分や細菌等を腹水濾過器で除き、次にアルブミンなどの成分を腹水濃縮器で濃縮して血漿様蛋白濃度に調整した後、患者様に再注入する方法です。

・血液吸着療法
血液吸着療法とは血液を体外に出し、吸着材を充填しているカラムに還流して、吸着除去後体内に血液を戻す方法です。

・CHDF(持続的血液濾過法)
CHDFとは透析液と補充液を用いて、拡散と限外濾過により溶質除去を行う治療法です。適応疾患には急性肺水腫、敗血症、急性心筋梗塞、うっ血性心不全、MOF(多臓器不全)、心内膜炎、重症急性膵炎等があります。

・血漿交換療法
血漿交換療法には単純血漿交換(PE)と二重濾過血漿交換(DFPP)療法があります。

1.単純血漿交換(PE)
PEは血漿分離器にて血液を血球成分と、血漿成分に分離して病因物質も含めた血漿成分を全て廃棄し、破棄した量の健常者血漿を補う方法です。適応疾患には劇症肝炎、栓性血小板減少性紫斑病、多発性骨髄腫、薬物中毒等があります。
2.二重濾過血漿交換(DFPP)
DFPPは血漿分離器にて血液を血球成分と、血漿成分へ分離する。次に血漿成分を血漿成分分離器で病因物質が含まれる血漿と、病因物質が含まれない血漿に分離して、病因物質が含まれる血漿を廃棄し、破棄した血漿をアルブミン製剤で補う方法です。適応疾患には全身性エリトマトーデス、悪性関節リウマチ、家族性高コレステロール血症等があります。

設備

RO水装置(三菱:DC-nanoⅡ)

多人数用透析液供給装置(日機装:DAB-40NX)

A液溶解装置(ニプロ:NPS-50AH)

B液溶解装置(二プロ:NPS-50B)

患者監視装置(日機装:DCS-100NX  24台 DCS-200Si 5台)

個人用多用途患者監視装置(日機装:DBB-100NX  1台)

血液浄化装置(旭化成メディカル:ACH-Σ 1台)

 

 

 

 

[人工呼吸器業務]

SERVO-air

当院では急性期に対応する人工呼吸器を5台保有しています。
人工呼吸器の使用時には、使用時チェックリストを作成し、1日1回機械と患者様の状態の観察を行ない、呼吸器設定の見直しや呼吸器離脱に向けた支援をします。機械の保守点検も1次メンテナンスは当院で施行し、日常点検、使用後点検、定期点検も行ないます。
また院内の医療スタッフに対して定期的に学習会を開催しています。
その他に在宅呼吸療法を必要とする患者様への指導や、機器の選定、自宅へ戻られた患者様のところへ定期的に訪問し、呼吸器の使用状況や動作の点検を行なっています。

 

[ME機器管理業務]

保守管理業務として、院内の医療機器について、点検・修理履歴一覧や製造番号等をデータ管理しています。これらのデータから医療機器の保守点検・機器更新をしています。輸液ポンプやシリンジポンプ等の医療機器の貸し出し業務や、異常が発生した機器の交換・回収・修理も行なっています。
その他に、医療スタッフの医療機器に対する知識向上を目的に院内研修会を開催、医療機器に関するトラブルや情報などを、安全管理情報として院内LANを用いて全職員に通知しています。
また、各メーカーが企画するメンテナンス講習会等にも積極的に参加し、必要な技術を習得して、徹底した保守管理体制の確立と、医療機器の質の保証を第一に努力しています。

 

[内視鏡業務]

内視鏡検査は、普段は見ることができない体の中の様子を、内視鏡の先端部に搭載された小型撮像素子(CCDなど)を介してモニターに映し出すことで、食道、胃、腸などの食物の消化や吸収を行う消化管に病気があるかどうか調べ、治療をするため世界中で広く使われています。お腹の内部を直接リアルタイムに観察することができるため、検査精度が高く、早期がんを発見するには欠かすことのできない検査・治療となっています。

主な業務は、内視鏡関連機器の保守及び管理、上部・下部消化管内視鏡検査・治療の介助を行い、内視鏡技術支援を行っています。代表的な内視鏡検査・治療を紹介します。

 

・組織採取

小さな鉗子(かんし)等を使って生体組織を取り、この組織を顕微鏡で観察(病理検査)することで、組織細胞の形や異常などから良性・悪性の判断をする事が可能です。

・ポリペクトミー

良性腫瘍を含めた隆起(りゅうき)性病変を切除・治療する方法です。

画像提供:オリンパス株式会社

・内視鏡的粘膜切除術(EMR)

内視鏡を用いて、スネアと呼ばれる金属の輪を病変部に引っ掛け、高周波電流を流して病変を切除し、組織を回収する治療方法です。

・内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)

EMRで一度に切り取ることができないサイズの病変に専用の処置具を使い、より広範囲に病変を切り取ることが可能な治療方法です。

画像提供:オリンパス株式会社

・内視鏡的胆道結石除去術

内視鏡を使って、胆道の中にできた石を砕き(砕石)、取り出したり(採石)する治療方法です。

 

これらの内視鏡検査・治療領域は、高度先進医療の代名詞といっても過言ではなく、医療機器のスペシャリストである臨床工学技士が、内視鏡検査・治療領域における業務支援をしています。

 

[手術室業務] 

現在2名の臨床工学技士が手術室業務に携わっています。多くの医療機器がある手術室において、看護師と協力し合い安全かつスムーズな、医療が提供できるように業務に励んでいます。主にどのような業務をしているか説明していきます。

 

・点検業務

安全な手術をしていく為に医療機器の点検は欠かせません。麻酔器、シリンジポンプ、輸液ポンプ、生体監視モニター、電気メスなど他にも、様々な機器の始業点検や定期点検を施行しています。また新しく導入される機器の使用方法の説明など、安全に取り扱いするための講習を行っています。

・外回り業務

看護師と同様の間接介助はできませんが、同等の外回り業務を行っています。部屋の準備、患者入退室、麻酔導入の介助、体位固定の介助などあらゆる業務を行なっています。

・機械出し業務

一般外科、整形外科、形成外科、脳神経外科など当院のあらゆる手術の器械出しをしています。器械の名称や使用方法の理解はもちろんのこと、解剖学的にも理解する為に日々知識の習得に励んでいます。

・中央材料業務

手術や外来の診察等で使用した器械の、洗浄業務や滅菌業務を行っています。

・その他業務

脳神経外科の手術の際に周術期の神経合併症、感覚機能、視覚・聴覚機能障害予防のため術中神経モニタリングや、肝臓腫瘍に対するラジオ波焼灼療法、神経疼痛治療の高周波凝固療法やパルス高周波療法の機器操作も行なっています。