痛みの役割

私たちは「痛み」を感じることで、身体に何らかの異常や異変が生じていることに気づきます。もし、「痛い」という感覚がなかったら、危険を察知したり、回避することができず、ケガや病気を繰り返したり、命の危険につながることもあります。私たちの身体や命を守る、生命活動に欠かせない役割を持ちます。しかし、なかには必要ではない痛みもあります。必要以上に長く続く痛みや、原因がわからない痛みは、大きなストレスになります。

痛みを感じるしくみ

切り傷や火傷、打撲などにより身体が刺激を受けると、「身体が傷ついた」という情報が発生します。その情報は電気信号に変換され、神経を伝って脳に届きます。脳がその情報を認識して初めて、「痛い」と感じるのです。通常は、痛みの原因となったケガが治ると、痛みも消えていきます。

痛みの種類

ひとくちに「痛み」といっても、原因や状態によってさまざまです。 「痛み」は、その原因によって大きく3つに分けられます。長引く痛みなどでは、この複数の原因が関与していることが多いです。痛みの図1

痛みの慢性化

急に痛くなり、短期間でおさまる痛みは「急性の痛み」、1~3ヵ月以上と長く続く痛みは「慢性の痛み」といわれます。「急性の痛み」は、その原因となるケガや病気が治れば消えていくものですが、痛みが生じたときに適切な治療をせずに、そのまま放っておくと、痛みが別の痛みを引き起こし、「慢性の痛み」に変わってしまう場合もあります。 痛みは、交感神経の緊張と運動神経を興奮させ、血管の収縮や筋肉の緊張を起こします。その結果、血行が悪くなり、「痛みを起こす物質」の発生につながります。

通常、痛みが生じても、交感神経の反応はすぐにおさまり、血行が改善されて、痛みが鎮まります。しかし、痛みが長引くと、血行の悪い状態が続いて「痛みを起こす物質」が多く発生するようになります。この「痛みを起こす物質」は血管を収縮させるため、さらに血行を悪化させ、また「痛みを起こす物質」が発生する、という“痛みの悪循環”を引き起こしていきます。 また、痛みが慢性化すると、痛みを引き起こした原因がなくなっても、痛みを取り去ることがなかなかできなくなります。 さらに、痛みが続くことで痛みにばかり注意が向きがちになり、眠れなくなったり、不安や恐怖からうつ状態につながり、ますます痛みにとらわれて症状が重くなるという悪循環に陥ることもあります。 痛みは慢性化する前に、適切な治療を行って早期に原因を取り除くことが大切です。無理な我慢は禁物です。痛みの悪循環を断つため、早めに医療機関を受診するようにしましょう。

痛みが長く続いたり、さまざまなストレスにさらされていると、本来、私たちが脳の中に持っている「痛みを抑える神経」の力が弱くなり、痛みを普通より強く感じたり、痛みが慢性化することがわかっています。痛みの図2