リウマチセンター

リウマチの新しい治療

抗サイトカイン療法

インフリキシマブ(IFX)

近年、関節リウマチの関節内の炎症の場である滑膜より、炎症を引き起こすたくさんの種類のサイトカインというたんぱく質が放出されていることが判明し、このサイトカインを押さえれば、リウマチの関節炎は改善するであろうという発想で、抗サイトカイン療法が考案されました。まず、最初にサイトカインを中和する抗体(体に害を与える毒素(サイトカイン)を中和するというもの)療法が臨床応用されました。一つは、抗TNF抗体のインフリキシマブで、米国セントコア社で開発されました。この薬剤は、MTXと併用した際に劇的な効果があり、関節リウマチにぜひ使用したい薬剤です。下図にその効果を示します。また、驚いた事にこの薬剤はリウマチによる関節の破壊を止める事が可能である事が示されました。

この薬剤は、点滴注射で0,2,6週後に投与し、以降は8週間ごとに投与します。また必ずMTXと併用しなければなりません。

30週までの全ての評価日におけるACR基準20%以上の改善率

2003年7月より注射薬(インフリキシマブ)が日本でも保険適応になりました。この薬剤は素晴らしい効果があり、リウマチによる骨破壊を抑制する力もあります。しかしこのような強力な薬剤は、副作用もあり、十分な臨床経験のある施設で使用すべきです。実際にインフリキシマブを使用した経験より、これらの抗リウマチ剤にてリウマチを治すのも夢ではなくなったと感じています。

エタネルセプト

本剤もTNFαというサイトカインを中和するお薬ですが、インフリキシマブとは異なり可溶性TNFαレセプターを遺伝子組み換え技術にて作成したものです。TNFαやTNFαを阻害して効果を現します。現在、この薬は週に1回50mgずつ皮下注射で投与しています。この薬剤は、外来で簡単に使用できますし、インフリキシマブに比べてもその効果はさらに高く、インフリキシマブが無効の患者さんにもよく効きます。また、リウマチによる関節破壊の抑制効果も高く、市立御前崎総合病院では使用患者も200名を超えてきました

最近の論文で、関節破壊がエタネルセプトとMTXの併用にてマイナスになったと報告されています。このことは、関節の破壊が修復された患者さんがいるという事です。これは、驚くべき結果であり場合によっては破壊された関節が良くなることがある事を示しています。

アダリブマブ

この薬剤は、2008年から使用可能になりました。抗TNFα抗体製剤であり、インフリキシマブと基本的には同じような働きをします。ただし、完全人型でヒトのタンパク質で作られていますので、皮下注射が可能になりました。2週間に1回の皮下注射で病気をコントロールします。インフリキシマブに比べて外来で簡単にできますし、自己注射も可能です。

トシリズマブ

本製剤は、日本で開発され発売されたメイドインジャパンの抗体製剤です。今まで述べてきた抗TNF作用ではなく、IL-6というサイトカインの効果を抑制します。この薬の特徴は、効果が出てくるまでに少し時間がかかるが、確実に臨床症状が改善する事です。抗TNFα製剤と全く異なった作用機序で働きますので、抗TNFα製剤が無効でも、十分に効果がある事が多くセカンドチョイスで使用しています。また、MTXが使用できない患者さんでも効果は高いので、使用しはじめています。この製剤の特徴は、完全に血液中の炎症性の物質(CRP,血沈など)を陰性化します。このため、難治性であった2次性アミロイドーシスにも効果があることが報告されています。

生物学的製剤の副作用

薬が強力になればなるほど副作用の出現は多くなります。従って、しっかり管理して適応を守って治療薬を使うべきです。生物学的製剤の主な副作用は、重篤な感染症(肺炎を含む)、結核、悪性リンパ腫の発生に注意しなければなりません。結核については、TSPOT陽性やツベルクリン反応強陽性の人は結核予防薬の服用が必要です。重篤な感染症対策は、胸部Xpや血液検査にてチェックしますが、ペンタジンの吸入を行いニューモシスチス肺炎の予防をしています。また、65歳以上の方は、肺炎球菌ワクチンの予防接種を勧めています。悪性リンパ腫については、関節リウマチに罹患した人は、健常者の約2倍の確率で起こりやすく、生物学的製剤を使用しても、頻度に変化はありませんが、注意して使用しています。欧米の報告では、生物学的製剤を使用した人と非使用者との比較すると、生物学的製剤使用者のほうが長生きであると報告されています。

その他のリウマチの薬物療法

現在のところリウマチを完治させる確立した治療法はありません。従って、現在の私達の目標は、リウマチをコントロールして(腫れや痛みを和らげて以前の状態に戻す)、関節が破壊されるのを防ぐ事にあると思います。この治療の戦略の中で、睡眠・休養・局所の安静あるいは冷えや湿気から身を守る等の基礎療法やリハビリテーションが非常に大事であることは論を待ちません。しかし、以下の項ではみなさんが最も関心があると思われる生物学的製剤以外の「おくすり」の話をしたいと思います。

リウマチを治療する時の薬は、(1)非ステロイド系抗炎症剤(痛み止め)(2)ステロイド剤(3)抗リウマチ剤に分けることができます。それぞれの薬の使い方は、主治医とよく相談して決めなければなりませんが、『どのような働きのある薬か?』『副作用はどうか?』といった事について知っておく必要があります。

(1)非ステロイド系抗炎症剤(痛み止め)

リウマチで最も困るのは、関節が痛く腫れてどうにもならない事ですが、この系統の薬は、主に痛みを止めるものであると考えてくださってよいと思います。皆さんは、アスピリン(アセチルサリチル酸)をかぜや頭痛時に飲んだ経験があると思いますが、このアスピリンもリウマチによく効くとされ、一時代前には大量に使われました。しかし、胃腸症状(胃の痛みや出血)の副作用のために現在は、ほとんど使われません。このアスピリンと同じ種類に属するのが非ステロイド系抗炎症剤です。この系統の薬は、専門医でも覚え切れないぐらいたくさん出ていますが、要は痛みをある程度押さえる事を目的として使います。決して痛みを完全になくす程大量に使ってはならないと思います。多すぎれば、副作用ばかり出すことになります。またこの系統の薬は、飲み薬と座剤(おしりから入れる薬)という形で2種類を使うことはよくありますが、飲み薬を2種類使うことはありません。これは、2種類の消炎剤を服用しても痛み止めの効果はたいして強くならず、副作用ばかり出てしまうからです。この種類の薬の副作用は、食欲不振、胃腸障害(胃潰瘍、十二指腸潰瘍)、発疹、むくみ、腎障害、血液障害などです。

最近、より副作用の少なく、効果のある薬が開発され発売されました。これらの薬は主に炎症(腫れや痛み)を起こしている部位にのみ効果を示し、胃や十二指腸などに副作用が起こりにくいように作られたものです。しかし、いくら安全性が高い薬であると言っても、それぞれの薬によってその人の体質に合う合わないがありますので、主治医の先生とよく相談して選択せねばなりません。また、自分の服用している薬の名前は覚えておいてください。胃潰瘍・十二指腸潰瘍、喘息、腎機能障害、心臓病や血液の病気のある患者さんはこの系統の薬を服用できない場合があります。よく、歯医者さんで抜歯をしたり、整形外科にて骨折、腰痛や50肩、風邪を引いた時の熱冷ましとして使用されますので、リウマチで非ステロイド系抗炎症剤(痛み止め)を服用している旨を申し出てください。同時に2種類の非ステロイド系抗炎症剤を服用するのは危険です。あくまでも、この系統の薬は、症状(関節の痛み)を少しでも押さえるために使用しますが、リウマチそのものを押さえる力のある薬ではありません。

(2)ステロイド剤

ステロイド剤が発見された時、これでリウマチも完全に治すことが出きるのではないかと思われたぐらい効果のある薬です。しかし、その後ステロイド剤は、長期的にはリウマチの関節破壊を押さえることができないことと、その副作用が問題となり、使うべきではないとまで言われた時代がありました。今でも、リウマチ専門の医師の中には毛嫌いして使われない方もいらっしゃいます。しかし、痛み止めで効果のないリウマチの患者さんを診る時、ステロイド剤ほど即効性で痛みや腫れに効果のある薬は他にありません。また、2年間という短期間であれば、リウマチの骨破壊(リウマチによる骨の破壊)を押さえる効果があることが発表されました。さらに、次ぎに述べる抗リウマチ剤は、ゆっくり効いてくる薬で、当座の苦しみを和らげることはできません。従って、プレドニゾロンというステロイド剤を1錠(5mg)程度使って、ともかく痛みや腫れをコントロールしながら、抗リウマチ剤や生物学的製剤を併用して、徐々にプレドニゾロンを減量するという方法をとることも多いのが現状です。むやみに恐れることなく、このステロイドのよい効果を引き出す様な使い方が大事だと思います。

副作用は、このプレドニゾロンを長い間使用していると起こってきます。例えば、顔が丸くなったり、皮膚が弱くなったり、胃潰瘍・十二指腸潰瘍や糖尿病になりやすくなったりします。また、長期に飲んだときは、骨が弱くなる骨粗鬆症に注意せねばなりません。ステロイド剤を使用していく事は、その副作用との戦いであると思います。しかし、腎機能が悪い人や痩せてきて全身の具合の悪い人、発熱の続く人あるいはアレルギーが強く抗リウマチ剤を使えない人などには、他に使える薬が無く、このステロイド剤のみが最後の砦である場合もあります。

さらにリウマチでこのプレドニゾロンを服用している人は、主治医に相談せずに勝手に一日量を変更したり、服用するのを中断してはいけません。この薬を突然中止すると、副腎不全といった重篤な症状(体の異常なだるさ、血圧の低下、痩せ、食欲不振、意識障害など)が出現し、リウマチの増悪(体中の関節の痛みや腫れ、発熱、朝のこわばりの増強など)が起こります。ステロイド剤を服用している患者さんは、必ず主治医に相談して減量や中止をしてください。転居や主治医を変える時には、必ず申し出て、服用している薬の種類や一日量を書いた紹介状をもらってください。市立御前崎総合病院では、待ち時間が長く、遠方であり転院したいとお考えの患者さんも多いと思いますが、その際は必ず申し出てください。主治医に不快感をもち、腹が立っても必ず紹介状をもらってください。主治医側でも、どんなに不愉快でも怒っていても、紹介状や検査データーは必ずお渡しします。なぜなら、医者はあくまで医者であり患者さんに良くなってもらいたいからです。

(3)抗リウマチ剤

抗リウマチ剤は、リウマチによる関節の破壊を抑制し、リウマチの進行を押さえる効果を期待して使う薬です。この系統の薬は、リウマチにしか効果がなく、痛み止めとは全く異なり、すぐには効果がなく2〜3ケ月間治療をしてやっと効果がでてきます。従って、すぐに効かないからといって止めてしまっては、困る薬です。最近、この系統の薬は目覚ましく進歩し、今までのリウマチの薬物治療が大きく変わりました。日本では、1999年にメトトレキサート(MTX)の関節リウマチへの保険適応が認められ、市立御前崎総合病院では約80%のリウマチの患者さんがこの薬を服用しています。ますますMTXを使用する患者さんが増加すると思われます。また、MTXに匹敵すると思われるレフルノミドが発売され、多くの患者に使用されましたが、間質性肺炎が多発し、副作用で亡くなる方もあり、適応が見直されごく一部の限定された患者さんのみに使用されています。また、2005年に日本で開発された免疫抑制剤のタクロリムスがリウマチにも使用可能になりました。

(1)メトトレキサート(MTX)
この薬剤は、欧米ではリウマチに対する優れた効果と他の抗リウマチ剤にない即効性が評価されて、関節リウマチの早期から広く用いられています。しかし日本では、1999年夏より本剤が保険適応になり、使用が許可されました。但し、もともと抗癌剤として約30年前に日本に入ってきた薬剤であり、副作用も皆無ではなかったので、早期のリウマチより使用するには抵抗もあったのですが、最近はリウマチを寛解に導くために早期より使用すべき薬と考えられるようになりました。この薬の特徴としては、その飲み方が変わっていて、1週間にある曜日に朝、夕と2回服用するか、朝、夕、朝と2日間で服用する方法をとっています。常用量は、1週間に3〜4錠ですが、効果が不十分であれば増量します。副作用は、肝障害、間質性肺炎、造血器障害に注意せねばなりません。市立御前崎総合病院では、副作用軽減のため葉酸を併用していますので、飲み方に注意してください。特に、高齢者(70歳以上)や腎障害、肺に問題のある方は、副作用が出やすいので慎重に使用します。しかし、使用してみると、この薬剤は非常に効果があり、使用後一ヶ月ぐらいより効果が発現し長期にリウマチを良い状態に保つ事ができます。その効果は、投与後12週まで急速に関節の痛みや腫れが改善しそれが長期に持続します。

(2)スルファサラジン
もともと潰瘍性大腸炎に使用されていましたが、抗リウマチ作用にも注目が集まり、日本でも保険適応になっています。特徴は、腎臓が悪い人でも使用可能な点です。橙色の大きな長細い剤形ですが、副作用は、薬疹や肝機能障害、貧血などです。薬疹以外には副作用が少なく、使い易い薬です。常用量は、1日2錠(1g)です。

(3)注射金剤
抗リウマチ剤の中で最も効果が高いものの一つで、その効果の持続も長いため、よく使われる薬剤の一つです。ただし筋肉注射のため、毎週もしくは2週に一度決まった曜日に注射をする必要があります。だから病院から遠方の方にとっては、大変で長続きしないことがあります。効果が現れるまで2〜3ケ月以上かかることが多く、じわじわと効いてきます。効果があれば、数年にわたって副作用に注意しながら注射をつづけます。副作用は、約30%の人にみられ、皮疹、口内炎、腎障害、蛋白尿、血液障害などです。副作用の中では、よく痒みを伴う皮疹が出るので注意が必要です。

(4)ブシラミン
日本で開発された抗リウマチ剤で、効果の発現がやや早く、切れ味は上記に述べたMTXに次ぐものといえます。ただし使い方が問題で、当初1日当たり3錠(300mg)使用したところ、蛋白尿の頻発をみました。現在の常用量は、1日当たり1〜2錠(100〜200mg)です。副作用は、まずネフローゼ症候群(タンパク尿)、皮疹、脱毛、味覚障害、口内炎、造血障害などです。薬の効果は高いのですが、副作用のタンパク尿はしばしばみられ、中止せねばならないのが難点です。従って、毎月の尿検査は必須です。

(5)タクロリムス
日本で開発された免疫抑制剤で、もともと肝臓、腎、骨髄移植の際に拒絶反応を抑制するために使用されてきました。作用機序は、免疫系のTリンパ球のIL-2産生を抑制するのが主な作用ですが、他のサイトカインの産生も抑制します。投与のしかたは、夕食後に1mg〜3mgを服用します。この薬剤は人によって吸収がまちまちですので、血液中の濃度(早朝の血中濃度)を測定して効果をチェックします。タクロリムス単独投与では、リウマチの約50%の患者さんに十分な効果がありました。しかし、現在はMTXと併用して効果を高める目的で使用する事が主になってきました。副作用は、腎障害、糖尿病、感染症、消化器症状などですが、MTXと併用時は特に重篤な感染症に注意する必要があります。

» 前の章「リウマチの経過、予後」へ » 次の章「おわりに」へ