リウマチの診断をするのは、今まで述べました様に、いろいろと難しい問題があります。しかし、私たちの経験から進行してしまったリウマチを治す事は、非常に困難である事も事実です。従って、早めに診断して治療しなければならないというのも実感としてあります。実際、早期に見つけて治療し、関節の変形が全くなく、ほとんど薬も服用せずに、良い状態の患者さんが何人もいます。これらの人の多くは、早めからしっかりした抗リウマチ剤を使った方です。しかし、なかには色々と治療しても全く効果のない人もあり、リウマチの治療は難しいと、いつも思い知らされています。
さて、リウマチの一般的な経過については、スミスという人が、1972年に発表した論文が良く引用されて、みなさんも一度は見た事があると思いますが、それは図の様になっています。
この様な経過については、スミスの臨床経験から提案されたもので、ほんとうに20%もの人が、自然に良くなるかどうかは疑問です。現在、このような自然経過(何もしないで様子を見る)をみる事は不可能ですし、医師として何もしないで、患者さんを診て行く事はできるはずがありません。実際には、約8-10%の患者さんが自然に良くなる様ですが、当然、薬による治療はされているのが普通です。
そこで、早期リウマチと診断された患者さんで、しっかりと治療したらどうなるかというデータは、松山赤十字病院の山本先生たちが出されていますので、こちらのほうがより実際的かと思われます。そのデータによれば、約15%程度が2年間で関節の痛みや腫れは完全に消失し、次いで半数の50%は、早期から開始した薬物療法や、リハビリテーションによる全身管理が効を奏し、関節症状もごくわずかとなり、リウマチを意識せずに日常生活を送る事が、可能なコントロール良好群となったとの事です。しかし、残りの35%は、現在考えうるすべての治療に抵抗し、うまくコントロールできないグループに入ってしまったということです(下図)。
このリウマチの経過は、まだ生物学的製剤が使用される前のものですので、さらに寛解にいたる患者さんは増加し、コントロール不良群は低下してきていると思います。しずれにしろ、このデータは、リウマチは早期に見つければコントロールできるという事を示しており、リウマチでも早期発見、早期治療は必要なのだと考えられます。しかし、一部にコントロール困難な症例があります。やはり、リウマチは悲観しても、楽観しても、いけない病気です。粘り強くあきらめずに、少しでもこの関節炎と、戦って行かねばならないと思っています。
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