前回『様々な病気に対応するリハビリテーション』の項目の中で簡単に説明させて頂きましたが、今回は『回復期リハビリテーション病棟』にスポットを当てて、説明させて頂きます。
脳血管疾患、大腿骨頚部骨折などの患者様に対して、身体機能・基本動作能力の向上、ADL(日常生活活動)能力の向上と家庭復帰を目的とした集中的なリハビリテーションを受けることができる病棟です。医師、看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、栄養士、相談員などが共同で、それぞれの患者様に合ったプログラムを作成し、これに基づいて実生活での自立を目指したリハビリテーションを行います。
対象疾患 | 発症から入院までの期間 |
脳血管疾患、脊髄損傷、頭部外傷、くも膜下出血のシャント手術後、脳腫瘍、脳炎、急性脳症、脊髄炎、多発性神経炎、多発性硬化症、脳神経叢損傷等の発症後もしくは手術後、又は義肢装着訓練を要する状態 |
2ヶ月以内
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高次脳機能障害を伴った重症脳血管障害、重度の頸髄損傷及び頭部外傷を含む多部位外傷 | |
大腿骨、骨盤、脊椎、股関節もしくは膝関節の骨折、又は2肢以上の多発骨折の発症後、又は手術後 | 2ヶ月以内 |
外科手術又は肺炎等の治療時の安静により廃用症候群を有しており、手術後または発症後 | 2ヶ月以内 |
大腿骨、骨盤、脊椎、股関節又は膝関節の神経、筋又は靱帯損傷後 | 1ヶ月以内 |
回復期リハビリテーションでは身体機能の回復はもちろんのこと、衣服を着たり脱いだり、食事をしたり、歩行したりなど、日常生活活動の再獲得や発症前の生活歴・ライフスタイルに合わせた趣味活動なども視野にそれぞれの退院後の生活(自宅生活・復職・復学など)に向けたをリハビリテーション展開しています。
リハビリテーション中はできるのに、病棟ではしていないといったように、「できるのにしていない」ということがよくあります。当院では、病棟での「している日常生活動作(ADL)」を向上・安定させ、最終的には家庭に復帰した時の「する日常生活動作(ADL)」の確立を目標にしています。ご自宅の生活をより自立したものとするために、患者さん一人一人に寄り添い、一緒にゴールを目指してリハビリを行います。
理学療法
理学療法とは病気や障害によって身体に障害を負った方々に対して、主に「運動療法」を用いて、基本的な運動能力の改善を目指し治療を行っていくものです。 主には起き上がる、歩く、階段を昇るなど日常生活に必要な動作の再獲得を目指してリハビリを行っていきます。
作業療法
病気や事故によって、身体,精神に障害を負った方々に対して、主体的に、よりよい生活をしていただくために、日常生活での様々な活動を用いて治療、訓練、指導、援助を行います。
言語聴覚療法
言語障害や飲込みに障害を持つ方に対してのリハビリを実施します。その他、神経心理検査等も実施します。
言語障害とは
失語症や構音障害(呂律のまわらない状態)などにより、周囲の方々とのコミュニケーションがとれない、あるいはとりにくくなることです。
嚥下障害とは
食べるための器官(口唇、顎、舌 軟口蓋、声帯、呼吸器など)の麻痺等によって、飲み込む動作が困難になることです。訓練室、検査室での検査、及び訓練、病室で訓練を行います。
入院初日から食事摂取の方法について医師、看護、介護職・管理栄養士等とともに、食事内容や姿勢の検討などを行っています。
皆様に知って頂きたいことは『入院生活全てがリハビリ』という考えです。訓練室でのリハビリのみでは在宅生活を見据えた場合には不十分です。そこで理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師・介護職等病棟スタッフが一丸となって皆様の生活に沿ってあらゆる場面においてご協力させて頂きます。
《生活の一例》
リハビリテーション
- 退院後の生活を想定しての早期からの機能訓練、動作練習、日常生活の様々な動作の能力を高める(マンツーマンのリハビリ 365日体制)
例:体重免荷装置での歩行訓練
ロボットスーツHALを用いた訓練
屋外での歩行練習
随意運動介助型電気刺激(IVES)
Vision training system
患者様の生活環境・ライフスタイルに合わせてより良い生活が過ごせるように協力
例:食事、着替え、排泄、入浴
訓練室での訓練だけでなく、看護・介護職員と連携し、病棟でもADL動作の訓練を実際の
生活を通して行います。
家事動作・職業復帰
書字・家事動作(料理・洗濯・掃除・買い物)・職業上必要な能力(パソコン・計算など)
趣味活動(各種手工芸、園芸など)
3.患者さま、ご家族様への自主トレーニング、介助指導
入院中だけがリハビリではありません。そのため、入院中に個別に自主トレーニングを指導しています。また、本人だけでなくご家族様も退院後の生活にはいろいろと不安があると思います。 そのため、入院中よりご家族様にもリハビリに入って頂き、歩く練習や、階段の練習等に参加して頂くことで不安を取り除くと共に、退院後の生活をイメージして頂くように努めております。
4.家屋訪問(入院時・退院前)
当院では入院されてから早期の自宅訪問を原則お願いしております。これはご自宅に伺い自宅環境の情報収集を行いと患者様の身体機能・能力を照らし合わせ、明確かつ具体的な目標を持ったリハビリテーションを提供する為でもあり、より安全で過ごしやすい在宅生活を送る為に実施しています。またご希望や必要に応じて退院前にも訪問をさせて頂いて、患者様の動作確認とご家族様へのアドバイスや介助指導、住宅改修に対してのアドバイスもさせて頂いております。
5.カンファレンス人単位で最適なプランを作成
個人単位で作成するプログラムに基づき、専門職がチームを組んで、患者様の回復促進に努めます。治療に際しては患者様の個別性を最重視し、入院初日から医師、看護師、リハビリスタッフ、医療ソーシャルワーカーなど多様な専門職が患者様・ご家族と関わり、最適なプランを作成し、早期回復を目指した治療を始めます。リハビリ内でも患者様について月に一回、定期的にカンファレンスを実施して、各専門職が経過報告を行い、今後の進め方について話し合います。
6.退院後はどうなるの?
当院の目指す「シームレスリハビリテーション」の考えのもと回復期から在宅へとリハビリを進めていく中で退院後の生活にも考慮し、かかりつけ医の指定や介護サービス事業所との連携など、あらゆる不安を払拭できるよう患者様の安心と幸せを最重視した対応を実践しております。
当院では同一病院内で予防リハビリ・急性期・回復期・療養型病床・老人保健施設・通所リハビリ・訪問リハビリ・通院リハビリを揃えました。一つの病院の中で発症からその後の自宅生活まで支援することが可能となっております。
退院後、当院以外の施設等を利用される方にも同様の対応をさせて頂いております。情報提供等滞りなく行うことで自宅での生活に困ることが無いように、またスムーズな介護保険サービスの利用に協力させて頂いております。
*実績
平成25年 日本医療機能評価機構 リハビリテーション病院 認定取得
平成26年8月8日号の『週刊朝日』に脳卒中リハビリのいい病院に紹介