抗インフルエンザ新薬「ゾフルーザ錠」について

平成最後の1月も半ばが過ぎ、皆様は如何お過ごしでしょうか?今年もインフルエンザが猛威を振るうシーズンが到来いたしました。

新しいインフルエンザのお薬

ところで皆さんは、昨年3月に新しいインフルエンザのお薬が、発売されたのをご存知でしょうか。名前は「ゾフルーザ錠」といいます。新聞やテレビで報道され、ご存知の方が多いかと思います。このお薬の最大の特徴は、内服がたった1回で済むところです。つまり薬局でお薬をもらい、その場で内服すれば、治療終了です。食事に関係なく服用できますので、とても便利です。当たり前ですが、飲み忘れは限りなくゼロです。皆様よくご存じの「タミフル」は、1日2回の内服を5日間行う必要があります。大体数日で熱は下がるので、治ったと思って飲まなかったり、飲み忘れたりすることもあるようです。しかし決められた用法・用量を守らなければ、ウイルスが十分減少せず、他の人に移してしまうこともあります。そのようなことを考えると、1回の内服で終了することは、手軽なうえ周囲にも安心と言えます。実は今までにも1回で治療が終わる、インフルエンザ薬はありました。「イナビル」というお薬です。このお薬は粉末を吸入するお薬ですので、吸入が十分できないと、十分な効果を発揮できないこともありました。例えば吸入の際、咳込んでしまったり、高齢者や小児が上手に吸えなかったりすると1回きりなのでやり直しが効きません。

今までのお薬

この新薬は、今まで発売されたインフルエンザ薬と違う機序で効果を発揮します。今まで発売されていたインフルエンザ薬は、「ノイラミニダーゼ阻害薬」という、同じ分類に属したお薬でした。商品名では、「タミフル」「リレンザ」「イナビル」「ラピアクタ」というものがあります。タミフルはカプセルで内服薬、リレンザ、イナビルは粉末の吸入薬、ラピアクタは液体で点滴薬です。それぞれ同じ作用点ですので、効果は比較的似ているとされていますが、タミフルはB型インフルエンザへの効果がやや低いのではないかと言われています。ラピアクタは点滴のお薬ですが、基本的には口から飲めない、吸えない方が、対象となりますのであまり使われません。その点リレンザはA型、B型ともに効果が安定し、学童にも投与でき、安心して使用されてきました。リレンザは粉末の吸入薬ですが、1日2回で5日間使用しますので、1回きりのイナビルよりは安心感があります。しかし、熱でぼんやりしている時に、初めて使う吸入器を正確に使うことは難しい点や持病に喘息のある方は、吸入と同時に咳き込んでしまうといったトラブルもよく起こり、注意が必要になります。

新しいお薬の特徴

今回発売のゾフルーザは、ウイルスのメッセンジャーRNAの合成を阻害し、ウイルスの増殖を抑えるエンドヌクレアーゼ阻害薬です。いままでのお薬より、急激にウイルス量が減少するようで、翌日にはウイルス量がタミフルの1/100くらいに下がります。従って周りの人に移してしまう機会も、いままでのお薬に比べると、少なくなることが考えられます。このように以前のインフルエンザ薬に比べると、優れた点が多いと思われます。ただこのお薬は新薬ということもあり、予防投与が認められず、薬の値段が少し割高であります。標準的な用法・用量で比較しますと、3割負担でタミフルが816円、リレンザが882円であるのに対し、ゾフルーザは1,436円です。またタミフルには最近、ジェネリックが発売されており、タミフルの半額ほどになります。従ってジェネリックと比較すると、ゾフルーザとは3倍ほどの開きがあるようです。ゾフルーザは確かに少し割高ですが、1回の内服で済み、速やかに改善するのであれば、有用な新薬であると考えます。

Sourse:ゾフルーザIF

日本感染症学会 「抗インフルエンザ薬の使用適応について(改訂版)」