糖尿病とインスリン治療

糖尿病とインスリン治療

【point】

<ブドウ糖>

脳や筋肉、内臓のエネルギー源

<インスリン>

すい臓から分泌され、筋肉などにブドウ糖を取り込む
インスリンの量が少ない・働きが悪いと血糖値が下がらない

<インスリン治療>

インスリンを体外から注射で補う治療法
作用時間の違うインスリン製剤がある
早い段階からインスリン治療をはじめることがある

ブドウ糖とインスリン

自動車がガソリンを燃料にして動くように、人間は血液中のブドウ糖を燃料にしています。ブドウ糖は、ごはん・パン・麺類・イモ類・菓子などに含まれています。食事からとったブドウ糖は吸収されて、血液中に溶け込んで全身に運ばれ、脳や筋肉、内臓を動かすときのエネルギーとして働きます。

血液中のブドウ糖は、「血糖」と呼ばれ、「血糖値」として測定することができます。血糖値は食事をすると増え、食後1~2時間をピークに減っていき、次の食事前には十分に下がった状態になります。

血糖値は、上がったり下がったり変動しますが、インスリンとグルカゴンいうホルモンの働きで上手にコントロールされ、いつも一定の幅の中で保たれています。インスリンは、すい臓でつくられます。食事をとって、血糖値が上がるとすぐにインスリンが分泌され、インスリンの働きによって、筋肉などの細胞内にブドウ糖を取り込み、エネルギーとして利用したり、たくわえます。その結果、血液中のブドウ糖は減少して血糖値が下がります。

糖尿病は、すい臓からでるインスリンが減少したり、インスリンの働きが悪くなって、血糖値を下げることができない状態が続く病気です。

インスリン治療

インスリン治療は、本来すい臓で作られているインスリンを、体外から注射で補う治療法です。薬のサポートで人間が持つ本来の血糖値を下げる働きを取り戻す、身体にやさしい治療法と言えます。薬として利用できるインスリンには、1.作用時間の短いインスリン 2.作用の持続するインスリン 3.それらを混合したインスリンがあり、これらを使い分けて健康者に近い血糖値になるよう目指します。

現在では、血糖コントロールを良好に保つために、早い段階からインスリン治療をはじめることが多くあります。血糖値が高い状態が続くと血糖値を下げるためにすい臓はインスリンを出そうと常に働き続けます。その結果、すい臓が疲れてしまい、インスリン分泌は徐々に少なくなり、やがては分泌そのものがなくなってしまう危険があります。糖尿病と診断された時点で、既にインスリン分泌は健康な人の約半分に低下しているという調査結果も報告されています。インスリン治療を早期から始めることで、すい臓の負担を軽くすることができます。すい臓の力が十分に回復すると、すい臓はインスリンを出しやすくなり、インスリン注射の量や回数を減らせるだけでなく、のみ薬だけの治療に戻せる場合もあります。すべての患者さんが飲み薬だけの治療に戻ることができるわけではありませんが、現在ではインスリン治療は糖尿病の最終手段ではないと言えます。(ただし、1型糖尿病ではインスリン注射は必須です。)

投稿日:2018.8.7