A1.妊娠中は免疫力が落ちているため、妊娠前よりも、病気にかかったときに治りにくく、 重症化しやすいことが知られています。2009年新型インフルエンザ大流行時、日本で妊婦死亡者は ありませんでしたが、諸外国では妊婦死亡が多数例報告され、新型インフルエンザのため入院を要した 妊婦では早産率が高かったことが報告されています。
A2. 一般的に妊娠中のすべての時期において安全であり、妊婦がインフルエンザに感染すると重症化することがあるため、ワクチン接種が勧められています。日本で使用されるインフルエンザワクチンは、病原性をなくした不活化ワクチンで、 胎児に悪影響を及ぼしたという報告はなく、妊婦は接種不適当者には含まれません。また妊婦がワクチンを接種することで母体の免疫が胎盤を介して胎児に移行し感染防御を与えることが期待されています。
A3. 授乳期間中にインフルエンザワクチンを接種しても支障はありません。
現行のインフルエンザワクチンは、不活化ワクチンです。母乳を介して乳児に悪影響を与えることはありません。ただし、お母さんがインフルエンザワクチン接種を受けたからといって、お母さん自身にインフルエンザの予防効果を期待することはできても、母乳を介してお子さんにインフルエンザの予防効果を期待することはできません。
A4.卵アレルギーであっても、全身症状あるいはアナフィラキシーショックを起こしたことがなければ接種が可能です。 ワクチンの製造過程においてわずかながら卵由来の成分が残存します。これによる卵アレルギーの副作用がごく まれに起こり得ます。近年は高純度に精製されているのでほとんど問題となりませんが、重篤な卵アレルギーのある方(鶏卵、鶏卵が原材料に含まれている食品類 をアレルギーのために日常的に避けている方)は、 ワクチン接種を勧めず、下記が推奨されます。
インフルエンザワクチンが接種できない場合
1) 発症(発熱)したら、ただちに抗インフルエンザ薬を服用する。
2) 感染者と濃厚接触した場合には、ただちに抗インフルエンザ薬を予防的に服用する。
A5.妊婦は重症化しやすいため、インフルエンザが疑わしいとされたら、いつも受診している産婦人科は避け、 地域の一般病院へ予め連絡してから受診するようにしましょう。産婦人科へ受診してしまうと他の妊婦さんへうつしてしまう可能性があります。
もしも、一般病院へ受診が出来ない場合は、かかりつけの産婦人科へ予め電話をしてから受診するようにしましょう。電話をすることで、他の妊婦さんへの感染を防ぐ事が出来ます。病院に受診するときは、 ガーゼではない不織布性マスクをつけて他の患者さんにうつさないように気を付けましょう。
A6.新型インフルエンザ大流行時、多数の妊婦(推定で4万人程度)が抗インフルエンザ薬を服用しましたが、胎児に問題があったとの報告はありませんでした。また、抗インフルエンザ薬服用が遅れた妊婦(発症後48時間以降の服用開始)では重症化率が高かったことが報告されています。
このため、妊娠中であってもインフルエンザ症状発現後48時間以内に抗インフルエンザ薬の投与を開始することが推奨されています。
*現在、インフルエンザ治療にアマンタジンは、催奇形性があるため、妊婦に使うことはありません。
A7.原則、母乳を与えることは可能です。インフルエンザウイルスは気道粘膜で増殖するので、血液の中に大量の ウイルスが出現することはなく、母乳中にたくさんのウイルスが出ることは考えられません。また搾った母乳を飲ま せて、そこから赤ちゃんにインフルエンザが感染したという報告もないようです。ただし、インフルエンザにかかった 母親がオムツを換える等、赤ちゃんの世話をすれば、やはり感染の可能性はあります。 授乳するときは次のことに気をつけましょう。
赤ちゃんにインフルエンザをうつさないための注意点
- 手は石鹸を使ってしっかりと洗いましょう。
- 赤ちゃんの顔に向かってせきやくしゃみなどをしないように気をつけ、ガーゼではない 不織布性マスクをつけて授乳しましょう。
- 重症で赤ちゃんのケアができない場合には,搾母乳を健康な第3者に与えてもらいましょう。
- マスク着用など感染予防策は,母親のインフルエンザ発症後 7 日目まで続けましょう。
A8.抗インフルエンザ薬が母乳に移行するとしても、ごくわずかでほとんど影響ないと考えらえます。
現在日本で使用されている抗インフルエンザ薬は、オセルタミビルとザナミビル 、ラニナミビル、ペラミビルがあります。そのうちザナミビル、ラニナミビルは吸入薬で、体内に 吸収される量は少なく、母乳中への移行はほとんどないと考えられますので、授乳中のお母さんに使用するの に適しているとされています。また、オセルタミビルも、内服した場合の血中の薬の濃度は低く、母乳中に移行したと しても、赤ちゃんへの影響はほとんどないと報告されています。 ペラミビルは注射薬で、口から飲んだ場合、 薬の吸収率は低いので、赤ちゃんへの影響はほとんどないと考えられます。
*アマンタジンは、以前A型インフルエンザの治療に使われて
いましたが、ウイルス耐性が問題となり、現在は、ほとんど使用されていません。
授乳婦にも使用されることはありません。